お餅のモチモチ感、あんこの甘み、そして苺のジューシーな酸味。この完璧な組み合わせ、実はお菓子の長い歴史の中ではかなりの「新入り」だということをご存知でしたか? 伝統を重んじる和菓子の世界に、昭和の終わりに突如として現れた革命児だったんです。
1985年、早稲田の街で生まれた「新しい味」
苺大福が誕生したのは、今から約40年前の1985年(昭和60年)のこと。意外と最近だと思いませんか? カステラや桜餅が数百年単位の歴史を持つのに対し、苺大福はまさに「現代の知恵」から生まれたお菓子なのです。
元祖については諸説ありますが、最も有力な説の一つが、東京都新宿区住吉町(早稲田近く)にある和菓子店「大角玉屋(おおすみたまや)」の三代目店主が考案したというものです。当時、あんみつに苺が入っていることから着想を得て、「大福に苺を入れてみたらどうだろう?」と試行錯誤を繰り返したのだそう。発売当初は「大福に生肉を入れたのか?」と見間違われるほど世間を驚かせましたが、一口食べればその絶妙なバランスに誰もが虜になり、瞬く間に全国へ広がっていきました。

「ショートケーキ」への対抗心?
当時、和菓子離れが進む若者たちに、どうにかして和菓子の魅力を伝えたいという職人たちの想いもありました。洋菓子の主役であるショートケーキに対抗し、苺という「洋」の要素を取り入れた苺大福は、まさに和菓子界の新しい扉を開く挑戦だったのです。その情熱があったからこそ、私たちは今、この至福の組み合わせを楽しめているんですね。
名前の由来は「大きな福」を呼ぶ苺
「苺大福」という名前は、もちろんその素材から来ていますが、ベースとなっている「大福餅」の由来を深掘りすると、さらにおめでたい意味が見えてきます。
もともと大福は、その形がお腹の膨れた様子に似ていたことから「腹太餅(はらぶともち)」と呼ばれていました。それが江戸時代に「大腹餅(だいふくもち)」となり、さらに縁起を担いで「大福餅(だいふくもち)」という漢字が当てられるようになったのです。そこに、冬から春の喜びの象徴である苺が加わった苺大福は、まさに「大きな福」を運んできてくれる、縁起物の集大成のようなお菓子だと言えるでしょう。
一口で溢れる、果汁とあんのハーモニー
苺大福をいただく時、一番の醍醐味はやはり「一口目の驚き」ではないでしょうか。柔らかいお餅を突き抜けた瞬間に、苺の果汁がジュワッと溢れ出し、それをあんこの優しい甘みが包み込む……。あの瞬間、すべてが調和する完璧なバランスに、私はいつも感動してしまいます。

昭和という新しい時代に生まれ、職人たちの情熱によって磨き上げられてきた苺大福。次にその鮮やかな断面を目にした時は、40年前にこの「甘酸っぱい革命」を起こした人々の勇気に、ちょっとだけ感謝したくなるかもしれません。春の「ちょうどいい」贅沢を、ぜひ心ゆくまで味わってくださいね。



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